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【インフルエンザ予防】いま「クロモジ」が話題、和ハーブで健康と美

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「のどからウイルスをブロック!」といま話題のクロモジエキス。愛媛大学医学部附属病院抗加齢・予防医療センターは、クロモジから抽出されるエキスの抗ウイルス作用が『インフルエンザ予防になり得る』とヒト試験で明らかしました。

インフルエンザウィルスは、鼻から咽喉にかかる部分(上気道)の粘膜に吸着して感染・増殖し発熱が起こるメカニズムがあります(下図)。和ハーブ「クロモジ」には、この上気道で活発化するウイルスの活動を抑える働きがあるというのです。

クロモジは、古来日本人の生活と健康を支えてきた

みなさんは日本でハーブ(herb)というと、海外発の香りの嗜好品というイメージが先立つでしょうか。日本最古の歴史書といわれる『古事記』では、複数の和ハーブの名前が記載されていて、古くから薬用植物として日本人の生活と健康を支えてきた歴史があります。

私たちが身近に感じやすい和ハーブはほかにも、ショウガ、シソ、ウメ、ヨモギ、ハト麦、緑茶など。西洋のハーブだけでなく、日本にもカラダをクリア-にして元気に導いてくれるハーブがたくさんあるのです。

【クロモジエキスがインフルエンザウイルスの増殖を抑制】

クロモジエキスには「プロアントシアニジン」というポリフェノールが含まれています。そのポリフェノールにより、体内の細胞内の抗酸化酵素を活性化させ、活性酵素が中和されることによって間接的にウイルスの増殖を抑えるというものです。

2017年12月~2018年3月に愛媛大学医学部附属病院に勤務する看護師ら134名を対象に「クロモジエキスのインフルエンザ予防効果」について、実証試験が行われました。その結果、クロモジエキスを12週間、毎日3回摂取した人たちは、摂取しなかった人たちと比べてインフルエンザの感染者数が有意的に少なかったということです※1。

【プロアントシアニジンの抗ウイルス作用メカニズム】

画像出典:
クロモジ研究会

このヒトを対象にした試験では、クロモジエキスが細胞に感染したウイルスの増殖を抑制する作用が明らかになったことを踏まえて実施された背景があります。ウイルス増殖抑制試験では、インフルエンザウイルスだけではなく、ノロウイルスやロタウイルスにも同じ働きが確認されたのです。

枝に黒い文字が現れて『黒文字』に

クスノキ科の植物であるクロモジは、リラックス効果が期待されるリナロールを主成分とする香りがあり、和のローズウッドともいわれています。

古来、枝葉を煎じてお茶にして飲用したり、楊枝・香木、油分が多いことから傘の柄など、日常生活の中で使われてきました。また山間部で火を起こすときに、燃えやすい木としてクロモジを探す地域もあるようです。

画像出典:
クロモジ研究会

クロモジの生息域は、北海道南部~九州に至るまでの広いエリア。杉など高い木の下に自生している落葉樹で、2~3mの低木です。

画像出典:
写真AC

「散形花序」といわれる花は、イチョウと同じ雌雄異株でサクラソウのような花の軸部分の先にほぼ均等な長さの柄をもつ複数の花が放射状についています。通常、1つの花芽の中には10個前後のつぼみをもっていて、淡いレモン色の花が春先に咲きます。

画像出典:
クロモジ研究会

クロモジは、若い緑の枝から黒い斑点模様が出現し、枝に黒い文字が浮き出てきたように見える現象から漢字では「黒文字」と書かれるようになったのが名称の由来といわれています。

茶道の楊枝にも使用される日本の文化

抹茶と生菓子のセットを供される場面で登場する木の皮つきの楊枝をみたことはあるでしょうか。

今でも和菓子に添えて使われている機会を見ることが多い「クロモジ」と「茶道」。かかわりの歴史を遡ると、千利休が茶室で庭のクロモジを小刀で削り、削りたての薫り高い楊枝を、仕えていた豊臣秀吉に提供していたと伝えられています。

クロモジは、抗菌作用などの働きがあるといわれていますので、千利休の心配りの一端が現れているような感じもします。現代では、クロモジ自体を使った和菓子なども作られているようです。

【楊枝専門店『さるや』の黒文字楊枝と和菓子の老舗『とらや』の和菓子(春ひかる/季節限定)の融合メニュー】

画像出典:
虎屋菓寮にて撮影(カラダクリア-編集部)

『さるや』は、創業三百年を誇る日本で唯一の楊枝専門店。用途に応じてさまざまな種類の黒文字楊枝を選ぶことができます。うなぎ、末広、竹ふし、太刀、櫂、梅、結び熨斗、鶴、松葉など、いずれも黒文字楊枝につけられたネーミング。実物を見てみたくなったらお店は東京都中央区日本橋室町にありますので、訪れてみては如何でしょうか。

京都では近年、縁結びで知られる野宮神社、桂離宮などで観ることができます。クロモジの細枝を縦に並べて組まれた「小柴垣」といわれる垣根が現在も使われており、天皇の即位式となる大嘗祭の中でクロモジの小柴垣に熱湯をかける儀式が有名です。

古式ゆかしい儀式の場で、クロモジから発する馥郁たる香りが周囲と調和している光景を想像すると、心穏やかになるワンシーンになりそうですね。

画像出典:
クロモジ研究会

現代の「楊枝」は、古い時代にクロモジの枝が歯ブラシとして使われていたことが起源のようです。楊枝という言葉から思い浮かべる道具に「房楊枝(ふさようじ)」という存在があります。

ルーツは仏教伝来の時代に日本へ渡来した歯ブラシの原型ですが、江戸時代にも歯ブラシの原型といわれる「房楊枝」があります。当時、経済的に貧しい武士たちの内職作業の一つとして「房楊枝」づくりが行われていました。人々は、「房楊枝」を使って舌のケアまで行っていて、大正時代に歯ブラシが出現するまで日常生活のなかで使われていたようです。

実際にクロモジが文献で登場し始めるのは、江戸時代に貝原益軒が編纂した「大和本草」という薬用植物図鑑です。現在は、国立科学博物館 地球館2F『江戸時代の科学技術 本草学から博物学へ』のコーナーに展示されているようです。

さまざまな用途で使われていたクロモジ。歴史的にさりげない存在感を発揮してきた和ハーブですが、意外にも花言葉は「誠実で控え目」。なんとも日本的で親しみやすいですね。

画像出典:
クロモジ研究会

古来ヒトのカラダの健康に、恩恵を受けている和ハーブ「クロモジ」。インフルエンザ予防の一助として、取り入れ方はさまざまです。癒される香りとともに愉しみながら、ヘルスケアに役立ててみてはいかがでしょうか。

●クロモジに関するアイテムの一部をご紹介●

香りを演出するためにクロモジ茶を和紙に入れても揉んだ後、ティーポットに入れ、提供されている。

*『星野リゾート界出雲』では朝食に煮だし茶が使用され、お土産用にも販売
kai-ryokan.jp/izumo/blog


クロモジのマドラーと香り棒
*お酒を飲むときのマドラーとしてお酒の風味を変身させるアイテム
「クロモジ小枝のマドラーでホッピーを楽しむ!」
lindera.kawai-bibi.net

クロモジを使った和菓子
見た目は漆黒に見えますが、実はクロモジの色調を反映した深い緑色の羊羹。お酒や紅茶など、お茶以外とも相性がよく、茶席で菓子を召し上がるイメージには留まらない魅力が感じられる。
『くろもじ羊羹』
satoya-matsubei.com

画像出典:
㈱佐藤松兵衛商店

以上のほかにもいろいろなかたちでクロモジは使われていますので、探してみると想定していなかった発見があるかもしれません。

【引用・参考文献】
※1:M. Igase,et al:Jpn Pharmacol Ther.2018;46(8)1369-73.
・和製ハーブ「クロモジ」エキスのインフルエンザ予防効果に関するヒト試験論文が医薬学術誌で公開に(養命酒製造株式会社との共同リリース)/愛媛大学プレスリリース
ehime-u.ac.jp/data_relese
・河野昭一:植物の世界 (樹木編) (ニュートンムック).ニュートンプレス,2001.
・稲本正:日本の森からうまれたアロマ.世界文化社,2010.
・吉武利文:香料植物 (ものと人間の文化史).法政大学出版局,2012.
・有岡利幸:香りある樹木と日本人―木の香りある日々の暮らし— (生活文化史選書).雄山閣,2018. 
・古谷暢基:和ハーブ図鑑.一般社団法人和ハーブ協会,2017.

【参考】
発熱のメカニズム(テルモ体温研究所)
国立科学博物館

【写真・情報提供】
クロモジ研究会
kuromoji.jp
有限会社ユーエムディー/風と森と水の国
lindera.kawai-bibi.net
株式会社 日本橋さるや
nihonbashi-saruya.co.jp
株式会社 虎屋
toraya-group.co.jp

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